どえすで
わたしが好きだってこと知ってて
最悪な男
でも世界で一番好きな男
Be deceiving by him all
目が覚めると隣には背中を向けて寝てるあなた。
なんで抱きしめてくんないのかな。
「早くに会いたい」とか会う前はそっちから言ってくるくせに
体を重ねて
眠る時は手を繋いで
キスをしてくれて眠るのに。
目が覚めてからは背中を向けている。
そんな冷たいあなたの背中に手を置いてもこっちを向いてくれない。
体だけの関係じゃないのに。
本当はずっと総悟の腕の中にいたい。
抱きしめて離さないで欲しい。
どこにも行きたくない。
キスして欲しい。
ただそれだけで幸せ。
それが幸せ。
けど、私の方が総悟が好きだからそんなこと言えない。
好きすぎて
愛おしすぎてそんなこと言えない。
「ん・・・」
隣に寝ていた総悟が目を覚ます。
目を覚ますとすぐ布団から出ていってしまった。
「おはよ。」
私が声を掛けても
「ん、うん。」
何それ。
挨拶じゃないじゃん。
ちょっとくらいでも、たまにはでも、甘い会話とかそういうのあってもいいんじゃないの?
そういうのが普通のカップルなんじゃないの?
私達って付き合ってるんだよね?
私の方が総悟のことが好きだとしても
総悟も私のこと好きなんだよね?
どうして気付いてくれないの?
むかつく。
総悟なんて嫌い。
こういう総悟大嫌い。
私ばっかり好きでばかみたい。
もういい。
私も布団から下りて無言で出掛ける用意をしだす。
服を着て、髪の毛整えて。
イライラして物音が大きくなる。
私、怒ってるって意思表示してるのに。
それでも反応なし?
もう本当に知らない。
今回ばかりはあたしも我慢の限界。
玄関まで行って、ばっと総悟の方を振り返る。
「あたし仕事だから!!!」
きっと私の今の顔、凄い顔。
膨れ面でむすっとしてて。
総悟はやっとちょとだけこっちを向いて
「あそうですかィ、バイバーイ。」
バタン!
あ り え な い。
あそうって何?
あの何も考えてなさそうな顔。
本当は今日仕事なんて無い。
総悟がくるのに次の日仕事なんて行くわけないじゃん。
私、怒ってること知ってるのにどうして気に掛けてくれないの。
言葉じゃなくてもいい。
抱きしめてくれるだけでもいい。
それだけで充分私は幸せになれるのに。
本当に頭きた。
ばかばかしすぎてドアをしめて大通りまで出たのは良いもののしゃがみこんでしまっていた。
もういい。
一生総悟なんて家に呼ばない。
私は急ぎ足でプリプリしながら歩き出した。
むかつくむかつくむかつくむかつく。
スタスタスタスタ・・・
むかつくむかつく・・・・
むか・・
ばっ!
「はっ?」
いきなり腕を引っ張られた。
振り返ると総悟の顔。
「なに?」
「うわ、可愛い女の子の態度じゃないですねィ。」
知らないよ。
総悟がいけないんじゃん。
今更なんなの。
『「離し」てよ!』
言葉に出そうとしたら急に引っ張ってた腕の方の手を繋がれる。
言いかけた言葉が驚きすぎて言い切れなかった。
そのまま総悟は歩き出す。
私も引っ張られたように歩き出す。
「なんなの?もう離してよ!!!!」
「いやですねィ。」
「どこ行くの?!」
「やっぱ俺も用事ありやしたんでねィ。」
むかつく。
けど嬉しいとか思ってる自分がバカみたい。
手を繋ぐだけでドキドキしてて嬉しくて。
どうしてこういう時だけ私の気持ちがわかるの?
どうしてこういう時だけ私がして欲しかったことしてくれるの?
「さいあく。」
そう呟いた。
総悟が振り返った。
総悟が近づいてくる。
私は目を瞑る。
唇にほんの一瞬温もりを感じた。
あぁ、これが総悟のキス。
目を開けるといつもの総悟のあのムカツク顔で
「好きですぜィ。」
さっきまであんなにむかついてたのに。
今もどこかでイライラしてるのに。
私は顔を上げて総悟を見る。
なんだか総悟が滲んで見える。
悔しいけど嬉しくて
憎たらしいけど愛おしい
それが私のすきなひと。
また背を向けて歩き出す総悟の背中を見ながら言う。
「総悟ってわざとやってんの?」
総悟が振り返る。
「当たり前でィ。」
ニッというカタカナが横につきそうなあの、総悟のいつもの意地悪な微笑み。
その瞬間笑がこみ上げる。
憎たらしいけど、その分だけ愛してる。
私の世界で一番好きな奴は
そんな
どえすで
さいあくで
憎たらしくて
でも
かっこよくて
愛嬌のある
世界でいちばん魅力的な奴です。
私はそんな彼に振り回されっぱなし。
私はまだ総悟と手を繋いでる。